【スマートホーム市場分析1.4】スマートビデオドアベル編

スマートホーム市場分析 1.4 スマートビデオドアベル編

今回の記事では、「スマートビデオドアベル」についてご紹介します。  

ドアベルの発展 

まず、「ドアベル」とは来訪時に呼び出し音を鳴らすことで在宅中の居住者に来訪を知らせることができるものです。日本では「ピンポン」「チャイム」などとも呼ばれています。当然ですがドアベルは呼び出し音を鳴らすだけなので、在宅時にしか来訪を知ることはできませんし、応対は玄関まで行く必要があります。室内外の騒音により呼び出し音が鳴っていたことに気付くことができないことや、玄関まで距離があった場合やすぐに玄関まで出られる状態でないと応対ができないこともあります。  

日本ではドアベルよりも「インターホン」と呼ばれるものが一般的に使われています。ドアベルとの違いは、来訪者と室内からコミュニケーションが取れるという点です。音声で玄関前にいる来訪者とコミュニケーションが取れることは、セキュリティ的にも大きな役割を果たします。しかし、玄関の前に立っているのが知り合いなのか、悪意のある人物なのかを音声で確実に判別することはできません。  

そこで日本の、特に女性や1人暮らし、お子様のいる家庭で好まれているのは「テレビインターホン」です。犯罪が多様化・高度化した現代においては、相手の顔が確認できる「テレビインターホン」はドアベルに比べるとかなり安心した暮らしが出来ます。しかし、専用ディスプレイが固定されているので近くにいないと応答しそびれることや、留守中の来訪者を確認することはできないこと、インターホンを押すまでは玄関前にいる人物を確認することができないので、インターホンを鳴らさない不審者には気付くことができません。  

そんな「テレビインターホン」でも生じる不安や不便さを、スマート化することで解消できます。  


スマートビデオドアベル  

「ドアベル」や「テレビインターホン」がスマート化されたものを、「スマートビデオドアベル」と呼びます。来訪者がドアベルを鳴らすとスマートフォンで通知を受け取ることができ、どこにいてもスマートフォンで応対ができます。スマートフォンの利用を前提として設計しているため、日本式のインターホンのように専用ディスプレイが不要であることが特長です。アプリケーション(の開発)で対応できるため、スマートフォンに限らずタブレットやスマートディスプレイなどでも応対ができるようになっています。

日本ではまだ普及していませんが、特にアメリカでの普及は目覚ましく、米国の調査会社Parks Asssociatesによると2023年第三四半期には普及率が20%にも到達しています。「スマートビデオドアベル」は応答のみでなく、玄関前の映像も遠隔で確認ができるので、来訪者が家に入れてもいいと映像で判断できる人物であれば、スマートロックを利用し、スマートフォンで解錠して中に入れてあげる、ということもできます。例えば、日本でも再配達に手間がかかることから置き配が普及し始めていますが、置き配は盗難リスクもあるので不安という人は、顔見知りの宅配員であれば宅内に置いていってもらい宅外に出たことも確認できます。   

スマートビデオドアベルは2013年にSkybell社が発明したことに端を発しており、同じ時期に立ち上がったRing社は2018年にAmazon社に買収されています。 Amazon社に買収され大々的なマーケティングを展開しているRing社と比較して、SkyBell社はB2B2C戦略を取っているために認知度が低いものの、スマートビデオドアベルの特許を多数保有しているSkyBell社は知財の面で業界では存在感があります。 Google社もスマートビデオドアベル市場に参入しており、 Google Nest Doorbellを販売しています。スマートビデオドアベルはアメリカでもっとも普及が早いスマートホーム製品のため、Ring、Skybell、Googleの3社以外にも多くのメーカーが続々と参入して来ています。

 


スマートビデオドアベルでもAIの搭載がトレンドに  

ChatGPTの登場により再びAIが脚光を浴びていますが、スマートホーム業界でもAIを搭載する動きがトレンドになっています。一例としてAlarm.com社の製品をご紹介します。  

Alarm.com社のスマートビデオドアベルでは、Alarm.com社が有しているAI技術を活用した「Video Analytics」(ビデオアナリティクス : ビデオ分析)使うことができます。Video Analyticsの詳細は前記事の「【スマートホーム市場分析 1.1】スマートホームセキュリティ」にありますが、呼び出しボタンを押さなくても玄関前の人を検出するだけでスマホに通知させることに加え、設定で自動録画などもできます。つまり、インターホンを鳴らさない不審者などの早期発見や記録ができますし、子どもや家族の外出や帰宅などもスマホの通知で知ることができます配達業者や家族が荷物を両手で抱え手が塞がった状態で玄関前に着いただけで通知が来るので、遠隔で即応対しロックを解錠してあげることもできます。  

Alarm.com社のスマートビデオドアベルには、付属製品のチャイムがラインナップされています。チャイムはコンセントに繋ぐだけで設置できるため、宅内の好きなところに設置すればスマートフォンが手元になくとも人の来訪を知ることができます。日本のインターホンは室内機が固定されていますが、こちらのチャイムは寝室や書斎など好きな場所に増設も可能です。また、Alarm.com社のチャイムはWiFiの中継機の機能も持っています。  

将来AIの進歩で顔の認識ができるようになると「子供が帰宅したら自動記録してその様子をスマホに通知する」ということもできるようになります。顔認識の精度が高まれば住人を認識してスマートロックを解錠してくれるという日も来るのではないかと思います。実際にAlarm.com社は2023年に顔認識をはじめとした様々なAIの開発をしているスペイン企業Vintraを買収しています。今後はハードウェアの機能強化のみならず、ソフトウェアで製品の機能が向上していく世界になっていきます。 

Alarm.com社ではバッテリーが切れる心配もなく、盗難の恐れも低い有線で給電するタイプのスマートドアベルが主流でしたが、バッテリータイプのスマートビデオドアベルも追加販売されました。バッテリータイプは、設置施工が有線製品に比べると容易で、設置場所も自由に選ぶことができます。玄関前と裏口など複数の位置にドアベルを設置することもできるので、セキュリティ面でもより安心できます。  

Alarm.com社のスマートホーム製品は、複数の製品を組み合わせて使うことができ、より安全で暮らしやすするソリューションを提供しています。  


日本とアメリカの違い  

アメリカでスマートビデオドアベルの普及が進んだ理由として、 まずアメリカには日本では当たり前になっているインターホンがそもそも普及していなかったことが挙げられます。スマートビデオドアベルが普及する前のアメリカ人から見ると、当時の日本のインターホンは未来を感じさせる画期的な商品でした。日本でのインターホンの普及率はほぼ100%であり、パナソニック社、アイホン社が大半のシェアを占めており、インターホンに対してスマートビデオドアベルが持つ優位性がまだ認知されていません。日本では住宅の設備をDIYで拡張する文化があまりないこともありますが、日本のインターホンは火災報知器連動機能を有しているものもあるため、「省令40号」というガイドラインにより付け替え自体が困難なケースもあります。日本におけるスマートビデオドアベルの普及にはいくつか越えなければならない壁はありますが、スマートロックやスマート照明、他のスマートホーム製品の普及と、明らかな利便性から、AIが搭載されるまでに至っているスマートドアベルが日本で一般する日もそう遠くないでしょう。  


まとめ  

今回の記事ではスマートホームの発展の要である、「スマートビデオドアベル」についてご紹介しました。スマートホーム製品というと単一の製品をイメージしてしまいがちですが、スマートホームはインターネットを通じてスマートホーム製品同士が繋がることで、日本もより便利で安心した暮らしになると考えています。  

また、スマートビデオドアベルのように、海外では普及していても日本では国独自の理由で普及しきれていない製品はたくさん存在します。弊社は、複数のスマートホーム事業を立ち上げた経験があるメンバーが揃っているので、スマートホームで暮らしや生活を豊かにしたい日本企業様向けのコンサルティングサポートを行っています。  

スマートホーム関連技術のみならず、スマートホームを事業化するノウハウを惜しみなくご提供するエデュケーションプログラムも提供しています。弊社のオフィス兼ショールームにて、国内外のスマートホーム製品を実際にご覧になることも可能です。ご希望の企業担当者様はお気軽にお問い合わせください。