IFA2023 : これぞスマートでエコフレンドリーな洗濯機の決定版

IFA2023 Samsung Less Microfiber Filter

スマートホームのプロ集団X-HEMISTRY代表の新貝です。
今回もIFA2023からのトピックで記事を書いてみたい。

近年はコネクテッド化へまっしぐらだった海外家電メーカーだが、環境問題への取り組みにも年々積極的になっており、サステナブルな取り組みも各社アピールし始めている。
繋がる家電やスマートホームをAIで制御して節電と快適さを維持する方向性はSamsungが業界を牽引しているが、IoTやAIではないところでもリーディングカンパニーになりつつあるように思える。

その中の一つがLess Microfiber Filterというプロダクトだ。

とある研究によると、カナダとアメリカでは、年間で世帯平均5.4億ものマイクロファイバーを家庭用洗濯から排出していると推計されており、これらの繊維は水生環境でプランクトンや魚、海洋哺乳類によって食物と間違えられ、摂取されることがあるそうだ。

このマイクロプラスチックの汚染を対策するためSamsungはCES2023で同プロダクトをコンセプト展示し、今回のIFA2023で正式なお披露目となった(正式アナウンスは2023年6月)。

このフィルターはSamsung製洗濯機専用ではなく、他メーカーの洗濯機にも簡単に取り付けることができる外部フィルターという位置づけになっている(下記はIFA2023のブースで流れていたセットアップ動画)。

PatagoniaとOcean Wiseの保全活動家との協力で開発されたこのフィルターは、河川や海に流れ込む可能性があるマイクロプラスチックの98%を捕捉するそうだ。

フィルターの内部では65~70ミクロメートル幅のメッシュでマイクロプラスチックを捕捉した上で本体内で圧縮されるため、フィルターはおおよそ月に一度の清掃だけで済む。当然のことながら、WiFi対応のプロダクトとなっているためSmartThingsプラットフォームに接続してユーザーにフィルターのクリーニングタイミングも通知してくれる。

このフィルターを使用して週に4kgの衣類を4回洗うと、1年間で500mlのプラスチックボトル8本分に相当するマイクロプラスチックが下水道に流れるのを防ぐことができる。

この製品自体もリサイクルプラスチックを使用して製造され持続可能な製品設計となっている。現在韓国で15万ウォン(117ドル/108ユーロ)で販売されているが、順次グローバル展開をしていく予定となっている。

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既にベルリンの家電量販店では実売されていた(ベルリンの家電量販店Saturnから)

実はそもそもこのLess Micro Fiber以外にもSamsungはPatagoniaと共同で洗濯機自体でのマイクロプラスチック削減にも取り組んでいた。
まずは洗剤の最適化・有効活用技術としてEcobubbleという泡だての技術を開発。布地に優しくかつ洗剤の使用量を最小限にして最適化することでエネルギー消費を削減するEcobubbleに加え、モーターの回転を最適化することによって衣類のダメージ保護とエネルギー消費を抑えるLess Microfiber Cycleという新しい機能を発表した。洗濯する際に設定メニューで「Less Microfiber Cycle」コースを選択すると、マイクロプラスチックの排出量を最大で54%抑制できる。
この技術はCES2023の発表後、欧州、韓国、および米国の互換性のあるサムスンの洗濯機に追加されたが、2023年後半にかけ、古いWi-Fi対応のサムスン洗濯機にもネットワークアップデートでLess Microfiber Cycleを利用可能にしていくそうだ。

ちなみにこの動きに賛同するかのごとく、IFA2023では他の家電メーカーでも類似の展示が見られた。

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IFA2023ではAEGも類似商品の展示
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Electroluxも追随し、コネクテッド家電のみならずSamsungは家電メーカーのお手本に

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著者 : 新貝 文将

スマートホームに特化したコンサルティングサービスを提供するスマートホームのプロ集団X-HEMISTRY株式会社の代表取締役。

2013年から東急グループでスマートホームサービスIintelligent HOMEの事業立ち上げを牽引し、Connected Design株式会社の代表取締役に就任。

2018年には株式会社アクセルラボの取締役 COO/CPOとして、SpaceCoreサービスの立ち上げを牽引。

2019年秋にX-HEMISTRY株式会社を設立。スマートホーム事業に関連するノウハウを惜しみなく提供する形で、多くの日本企業向けにスマートホーム事業のノウハウを伝授しつつ、数々のスマートホーム事業企画/立ち上げにも寄与。

リビングテック協会発行「スマートホームカオスマップ」の製作にも深く関わり、スマートホームのエキスパートとして日本のスマートホーム業界で認知されている。

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