Connectivity Standards Alliance公式サイトからMatter1.3でサポートされたエネルギー管理についてのブログが公開されたので、スマートホームBASEでは日本語抄訳をお届けします。
X-HEMISTRY CEOの新貝もMatter1.2、Matter1.3についてnoteで解説しているので、合わせてご覧下さい。
Amazon、Apple、Google、Samsungなどの業界をリードする企業、そしてConnectivity Standards Allianceに所属する数百社もの企業の協力のもと開発・採用された、スマートホームにおける相互運用性を実現するソリューションです。Matterはすでに多くの企業に支持されており、様々なスマートホーム製品やエコシステムに導入されています。Matter 1.3仕様においては、エネルギーレポート機能とエネルギー管理機能が追加され、対応するMatterデバイスがエネルギー使用量を標準化された形式で報告できるようになりました。これらの機能に対応したスマートホームシステムに接続することで、消費者はエネルギー使用量の把握がこれまで以上に容易になり、自動化やカーボンフットプリントの削減にもつながります。しかし、Matterの潜在能力はこれだけにとどまらず、スマートホームやエネルギー管理システムがAIや機械学習を活用して自己最適化を行い、ピーク時の電力グリッドへの負荷を軽減するほか、再生可能エネルギー源の変動を考慮しながら、消費者の電気料金の削減を実現します。
政府、エネルギー事業者、メーカーは長年にわたり、家庭内のエネルギー情報のモニタリング手法を統一するためのグローバル標準を求めてきました。Matterは、業界主導で開発されたオープンソースの相互運用性技術であり、こうしたニーズに対する理想的なソリューションです。
多くの取り組みが、ピーク時のグリッド負荷を軽減するために進められていますが、風力や太陽光といった再生可能エネルギー源が増加するにつれて、電力網は進化しています。注目されるのは、消費エネルギーの総量だけでなく、瞬間的な電力使用量の管理が重要視されるようになってきたことです。これに対応するため、Matterのエネルギー管理チームは、エネルギーレポートや管理機能をMatter標準に統合するために尽力してきました。このグローバル標準は、様々なMatter対応デバイスに適用されることを意識して設計されています。Matter 1.3仕様では、EV及びEVチャージャーやエアコン、家電製品など主要なデバイスをサポートしており、今後リリースされるMatter 1.4以降では、ヒートポンプや太陽光発電、蓄電池、給湯器などのデバイスもサポート予定です。Matterは、家庭内およびグリッド全体でのエネルギーバランスの維持を可能にし、OpenADR 3.0のようなプロトコルとの統合も進めていきます。これにより、数百万台のMatter対応デバイスが、持続可能なエネルギー未来に貢献する重要な役割を果たすことになります。
気候変動に対する迅速な対応が求められる中、各国政府は消費者に対し、化石燃料からの移行を促しています。これにより、消費者はEVを購入し、ガスや石油ボイラーを電気暖房に置き換えることが期待され、電力網への需要が増加する見込みです。各国政府は、電力グリッドの安定性を保つため、メーカーに対して「エネルギースマート家電(ESA : Energy Smart Appliance)」技術を製品に組み込むことを促しています。ESAは、給湯器や暖房システム、EV充電器、ソーラーパネルなどの家電製品が柔軟にエネルギーを使用できるようにする技術です。例えば、夕方の需要ピーク時にEVの充電を自動的に避けることで、グリッドの負荷を軽減し、炭素排出量の削減に貢献できます。
エアコンなどの家電製品は、長年にわたり、外部コントローラーからの指示で25%、50%、75%、100%といった電力制限が可能な有線インターフェースを備えていました。Matterによるエネルギー管理では、このアプローチが変革され、家電製品間での通信を通じて、より効果的にエネルギーを最適化できるようになります。例えば、屋根にソーラーパネルを搭載した家庭では、エネルギー管理システム(EMS)がその日の予想発電量をソーラーパネルに問い合わせることができます。ユーザーが洗濯機を試用する際「柔軟な洗濯開始時間」を設定すると、その洗濯機は電力需要をEMSに共有し、EMSはその情報を基に無料の太陽光エネルギーを活用し、グリッドからの電力輸入を最小限に抑える最適な洗濯時間を決定することができます。
多くの地域では、再生可能エネルギー源が不足しているピーク時には、グリッドが化石燃料発電に依存しているため、環境への負荷が増加します。こうしたグリッド状況を消費者やスマート家電に通知することで、炭素排出量の削減とグリッド負荷の軽減が可能になります。一方、風力や太陽光の発電量が過剰な場合、スマート家電が自動的に稼働し、消費者は低コストや無料のエネルギーを享受しながら、再生可能エネルギーの無駄を防ぐことができます。
Matter 1.3仕様では、電力およびエネルギー消費の計測機能が追加され、対応するMatterデバイスはリアルタイムで電力、電圧、電流などのデータを報告できるようになりました。これにより、EMSは現在の電力状況を的確に把握できます。また、デバイスエネルギー管理機能では、対応するESAが数時間先までのエネルギー使用予測を報告できるほか、グリッド状況に応じて動作の一時停止や瞬時の電力調整、電力使用のシフトが可能です。
Matterは家庭内ローカルネットワークで動作するよう設計されており、メーカーに多くの利点を提供します。消費者はスマートアシスタントやスマートフォン、スマートテレビを利用して、スマートデバイスを制御できます。これにより、デバイス間の通信がインターネットを介する必要がなくなり、セキュリティやプライバシー管理の選択肢が広がります。また、クラウドメッセージングの処理コストが削減され、メーカーは自社クラウドインフラの構築を避けることが可能です。Matterはオープンソースでロイヤリティフリーの相互運用プロトコルであり、認証プログラムも厳格に実施されています。SDKはGitHubで無料公開されており、エネルギー管理のサンプルアプリケーションも提供されているため、開発者がスムーズにスタートを切れる環境が整っています。
日常の運用では、ローカルEMSがエネルギー契約を最適化し、電気料金の削減と炭素排出量の低減を図ります。しかし、グリッド側の制御にはクラウド接続が必要であり、責任ある行動が求められるため、特定の地域ではライセンスが必要になる場合があります。ほとんどのMatterコントローラーはすでにクラウドに接続され、リモートでの家電製品の監視や操作をサポートしています。これらのコントローラーはインターネット経由でエネルギーアグリゲーターや需要応答サービスプロバイダー(DSRSP: Demand Side Response Service Provider)と連携し、柔軟な電力使用を可能にします。OpenADR 3.0のようなIPベースのプロトコルはMatterとシームレスに統合され、グリッドイベントの通知や制御がスムーズに行われます。
Matterは、シームレスで相互運用性を持つソリューションとして、スマートホーム業界を革新しています。Matter 1.3仕様によりエネルギー管理機能が導入され、エネルギーレポート機能を基に将来の機能拡張が可能な基盤が整いました。これにより、エネルギーの最適化が進み、消費者はカーボンフットプリントの削減やエネルギーコストの効果的な管理が可能になります。政府が化石燃料から電力への移行を促進する中、スマートエネルギーソリューションの需要は増加しています。Matterはオープンソースでロイヤリティフリーのプラットフォームであり、家庭内デバイスとグリッドとの通信を促進し、効率的で持続可能なエネルギー管理を実現します。データの処理が主に家庭内で行われることで、クラウドコストが削減され、データプライバシーも強化されます。厳格な認証プログラムと無料のSDKにより、Matterはよりスマートで環境に優しい未来を築くリーダーとなるでしょう。
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