スマートホームニュース#73 AppleがHEMSに向け前進、スマートキーボードの登場、テクノロジーと仕組みを活用した在宅シニアライフのこれから

Apple Homeがエネマネを強化 新フレームワーク「EnergyKit」で開発がより柔軟に制御可能に

https://www.theverge.com/news/685733/apple-home-energykit-energy-management-ios26-wwdc

目立たなかったWWDCでの発表、その裏で動いていたエネルギー戦略

WWDC 2025の基調講演では、Appleのスマートホーム「Apple Home」についての発表は一切ありませんでしたが、実は裏で注目すべき進展がありました。Appleは、開発者向けサイトにて新しいフレームワーク「EnergyKit」を発表しました。これは、iOS 26およびiPadOS 26で利用可能になり、Apple Homeのエネルギーデータを活用して、対応機器の消費電力を削減・調整できるようにするものです。

EnergyKitとは? 

EnergyKitは、Apple Homeで可視化された電力使用量、料金、クリーンエネルギーの可用性といった情報を、開発者のアプリに取り込むことができるフレームワークです。

例えば:

  • スマートサーモスタットが電気料金の高い時間帯に稼働を抑える
  • EV充電器が将来の電気料金に基づいて最適な充電スケジュールを自動で作成する

といった動作が可能になります。

現時点での対応機器はEV充電器とスマートサーモスタットです。これらの機器は、これまでも個別アプリでの電力スケジューリング機能を持っていましたが、EnergyKitを使えばApple Homeのデータと連携したスマート制御が可能になります。

Appleの「EnergyKit Guidance」という機能を使えば、クリーンエネルギーの可用性や価格を基に、ユーザーに最適なアクションを推奨することもできます。

Apple HomeがHEMSへ進化する布石か?

Appleは現在、サードパーティ製のエネルギー監視機器には対応していませんが、今回のEnergyKitの導入は、将来的にApple HomeがHEMS(Home Energy Management System)として本格始動するための準備段階とも考えられます。

SamsungのSmartThings(AI Energyモード)や、LG傘下のHomeyといった競合はすでにHEMS機能を備えており、Appleはそれらに追いつこうとしています。

Matterとの連携でさらに広がる可能性

AppleはMatter標準化の主要メンバーでもあり、Matterは最近、新たに以下のような電力関連デバイスに対応しました:

  • ヒートポンプ
  • 電気温水器
  • エネルギー貯蔵システム(バッテリー)
  • 太陽光発電機器(インバーターやソーラーパネルなど)

これにより、将来的にApple HomeがMatter対応デバイスを通じて、これらのエネルギー機器を統合制御できる可能性が高まりました。

スマートホームを操作できるメカニカルキーボードが登場

https://www.hackster.io/news/thirdreality-puts-a-mechanical-keyboard-on-your-matter-smart-home-network-for-quick-12-key-control-dca0267b247e

スマートホーム連携に対応したユニークな入力デバイス

THIRDREALITYは、Matter対応のスマートホームと連携できる有線キーボード「MK1」を発表しました。PC用キーボードとして使いながら、F1〜F12キーを使って12種類のスマートホーム操作を実行できます。Matterキーとの組み合わせで、照明のON/OFFやカーテンの開閉などを簡単に操作できるのが特徴です。

Matter over Wi-Fi対応で設定もシンプル

本製品は有線接続でPCとつなぐ一方で、2.4GHz帯のWi-Fi通信を利用してMatterネットワークに接続します。ワイヤレスキーボードとしての機能は持ちませんが、複雑な設定が不要でApple HomeなどのMatter対応エコシステムに統合することができます。

キーボードとしての基本性能も確保

テンキーレスの87キー構成で、メカニカルスイッチを採用しています。また、各キーがRGBに対応しており、44種類の照明モードもプリセットしています。USBケーブルで接続し、パーソナルな使用環境にも柔軟に対応したキーボードです。

価格と販売情報

MK1はTHIRDREALITYの公式ストアにて79.99ドルで販売中です。PC操作とスマートホーム制御を統合したいユーザーに向けた新しい選択肢となりそうです。

テクノロジーが支える在宅シニアライフ

https://www.kiplinger.com/retirement/how-technology-can-help-retirees-age-in-place

見守りと安全を実現するスマートデバイス

近年では、ビデオドアベルや人感センサー付きのスマートライトが、高齢者の転倒防止や不審者対策に活用されています。たとえばArloのカメラは、動きを検知して家族のスマホに通知を送る機能や、インターホン・サイレン・スポットライトが一体となった製品もあり、離れて暮らす家族もリアルタイムで確認・通話が可能です。また、Apple HomeKitやGoogle Homeと連携することで、音声操作でのライトやカーテンの開閉も実現できます。重いカーテンを引くといった身体的な負担を減らせます。

健康管理と緊急時対応の仕組み

米国では、RPM(Remote Patient Monitoring:遠隔健康モニタリング) や PERS(Personal Emergency Response System:緊急通報装置) が普及しつつあります。たとえば心拍数や血圧、血糖値を自動で測定・記録し、異常があると医療機関に通知されるシステムがあり、持病のある高齢者も自宅で安心して過ごせるようになっています。転倒検知つきのスマートウォッチも登場し、転んで動けない場合に自動で家族や救急に通知されるなど、緊急時の備えとして注目されています。

孤独感の軽減と認知症ケア

I-Careなどのデジタルプラットフォームでは、予定のリマインダーや写真共有、家族とのビデオ通話を1台の端末で簡単に行えます。これにより、認知機能の低下を補いながら、日々の孤独感を和らげる役割を果たします。また、Amazon EchoやGoogle Nestなどの音声アシスタントは、「薬を飲む時間だよ」と声かけしてくれる機能もあり、高齢者自身が“自分のリズム”を取り戻す手助けになります。

住み慣れた家を安心な住環境へ

テクノロジーだけでなく、物理的な改修も見守りには重要です。IKEAの「DIRIGERA」などのハブを使えば、既存の照明やブラインドをスマート化し、スマホや音声でのコントロールを可能にします。例えば「夜中にトイレに行くと自動で廊下の照明が点灯」といった設定も簡単です。段差をなくす、手すりを設置する、すべりにくい床材に変更するといった住宅改修と組み合わせることで、転倒リスクを大幅に減らせます。

費用面と導入のハードルを下げる工夫

多くのスマート機器は1〜2万円前後で購入でき、月額費用なしで使える製品も増えています。特に、AqaraやIKEAが提供するMatter対応の機器は、異なるメーカーでも相互に連携でき、コストを抑えながら拡張が可能です。また、アメリカでは医療保険で機器購入やモニタリング費用を一部カバーする制度もあり、今後日本でも自治体による支援が期待されます。

こうした取り組みにより、高齢者の「住み慣れた家での生活」は、より現実的で安心な選択肢となっています。このような機器や仕組みを活用しながら、個々のライフスタイルに合った形でテクノロジーを取り入れていくことが重要です。