【スマートホーム市場分析 1.2】進化する防犯カメラ  

スマートホーム市場分析 1.2 進化する防犯カメラ

 
前回、米国のスマートホーム市場の成長を牽引している「スマートホームセキュリティ」について紹介しました。 

ホームセキュリティシステムと言えば、多くの人が防犯カメラを思い浮かべるでしょう。防犯カメラは、従来のセキュリティシステムだけでなく、スマートホームセキュリティにおいても欠かせない存在です。 

現代社会の生活において、防犯カメラは様々なところで見かけるようになってきました。見渡せば、電柱、信号機、建物などに防犯カメラが設置されています。全世界の防犯カメラの普及数は約10億台に達し、アメリカの市民は1週間に平均238回、1日に約34回、防犯カメラに映っているとのデータもあります。 

従来のCCTVカメラだけでは現代のニーズを満たせなくなり、防犯カメラは技術の進化と共に、「スマート化」してきました。本記事では、防犯カメラの技術的進化、ネットワークカメラ、そして最先端のAI搭載ネットワークカメラの事例について詳しく解説します。 

従来の防犯カメラ 

1942年、エンジニアのWalter Bruch氏は、世界初のCCTVシステム(Closed Circuit TeleVision : ローカル接続型の防犯カメラシステム)を発明しました。その後、1949年には、米国のVericon社によってCCTVセキュリティカメラが一般向けに提供開始されました。 

映像技術の発展に伴い、1969年にはビデオカセットが導入され、1971年には消費者向けのビデオカセットレコーダー(VCR)が登場しました。時を同じくして、1960年代後半には、Marie Van Brittan Brown氏と夫のAlbert氏によって、ビデオセキュリティシステムが開発されました。 

1970年代から1980年代にかけて、防犯カメラとセキュリティシステムが人々に広く普及し始め、夜間の撮影技術や小型化の技術が向上しました。そして、1980年代から1990年代にかけてのデジタル革命により、防犯カメラもデジタルカメラが主流となりました。 

1996年には、初のネットワークカメラ(IPカメラ)が登場し、 従来のCCTVシステムのシェアを奪いながらも市場の成長に寄与しました。新しく登場したネットワークカメラは、高解像度でWi-Fiなどの無線対応版も登場し、更には耐候性を備えており、革新的な進化を遂げました。


CCTVカメラ vs ネットワークカメラ 

 
従来のCCTVカメラと現在のネットワークカメラを比較してみましょう。 

CCTVカメラ 

CCTVはアナログカメラシステムであるため、解像度が低めです。テレビの映像配信で普及した同軸ケーブルを使用してCCTVカメラとモニタリング用ディスプレイを接続し、ローカルネットワーク内でのみ、映像を閲覧することが可能です。インターネットを経由した接続はできないため、ハッキングのリスクは低いものの、映像の閲覧や録画は現地で行う必要があります。データの保存容量が多くないため、解像度やフレームレートを低く設定することが一般的です。 

ネットワークカメラ 

ネットワークカメラは、インターネットを経由して、遠隔からの映像を確認できます。Power over Ethernet (PoE) 規格を利用することで、電源の取得と映像の伝送が一本のイーサネットケーブルで行えるため設置もより簡単に行えます。さらに、高解像度で広い画角の映像撮影ができ、パソコンやスマートフォンなど複数の端末からからの同時アクセスも可能となっています。 

モーション検知付きネットワークカメラ 

リアルタイムで映像を確認できる利便性が手に入ったものの、普及当初のネットワークカメラには常時録画の機能がなかったため、ユーザーが常に映像を確認していないと見るべき瞬間を見逃してしまうという課題がありました。その後、クラウドの発展やSDカードの普及により、常時録画サービスを手頃に利用することもできるようになりました。しかしながら、常時録画された映像から見たい映像を見つけ出すには労力がかかるため、映像解析技術を活用したモーション検知機能が普及しました。

モーション検知機能を持つネットワークカメラは、常時録画と組み合わせて使うことができますが、カメラが捉えている映像の動きに変化があったことを検知することができます。映像の変化を感知したことをきっかけにクリップ動画を撮影し、スマートフォンに通知をすることができます。 

ただし、映像の中の小さな動きも検知してしまうため、風で草木が揺れたりするだけで反応してしまうことがあり、不要な通知の増加や余計な映像データが記録されることが課題となります。普段あまり動きがない場所には有効ですが、人や自動車などの往来が多いところでの利用はお勧めできません。 

AI搭載ネットワークカメラ 

過去10年間で急速に進化した人工知能 (AI) は、様々な業界に変革をもたらし、私たちの暮らしを変えつつあります。 コンピュータ関連技術の発展と関連モジュールの小型化と高度化によりエッジコンピューティングが手頃に提供できるようになってきたため、ネットワークカメラはAI化が進んでいます。かつては非常に高価な防犯カメラでしか提供できなかったAIも米国では一般消費者でも手頃な価格で利用できるようになってきました。 
 
従来のモーション検知は、前述した通り利用者が意図しない瞬間を多数検知してしまう可能性があります。AI搭載ネットワークカメラを取り入れると、リアルタイムで人や車両などの物体を分析・認識することができるようになります。こうなると利用者がさらに見たい瞬間をカメラ側がAIのアルゴリズムで絞り込んで提供してくれるようになります。 

具体的にどんなことができるようになるのかは、弊社X-HEMISTRYのビジネスパートナーである米国Alarm.com社が提供する機能を引用しながらご紹介していきたいと思います。


Alarm.com社が提供するAI搭載ネットワークカメラ※以下、「AIカメラ」

米国のスマートホームセキュリティプラットフォーム最大手のAlarm.com社のAIカメラを例に住宅・ビジネス向けのAIカメラサービスをご紹介します。 

まずはこちらのビデオをご覧ください。 

このビデオの内容に沿って、AIカメラの利点を紹介します。 
 

  • 人物や動物の検知

AIカメラはリアルタイムで特定のものを検出することができます。 

 
例えば、解説動画の中で示されているように、カメラによって玄関付近に近づく人が検知されると、すぐに利用者のスマートフォンやスマートウォッチに通知が送られます。これにより、ユーザーはスマートフォンの通知に添付された検出画像を確認し、その人物が不審者ではなく宅配の配達員であることを知ることができ、いつ荷物が届けられたかも把握することができます。 

下の画像を見ると配達員の足元に点線が引かれていますが、この「検出ライン」を人が横切ったことをAIが検知、映像をクラウドに自動記録しつつ利用者のスマートフォンに通知をしてくれます。 

また、人だけでなく動物の検知も可能です。例として、ペットが自宅から裏庭に出て行った時に、AIカメラは犬を動物として速やかに検知し、家主に知らせてくれます。このサービスの利用者である家主は裏庭に犬が外に出て行ったことを把握できるため、適切な対応を取ることができます。 

  • 車両の検知 

Alarm.com社が提供するAIカメラ機能は、車両の検知にも対応しています。 

この例では、車庫の前の道に「検出ライン」を設定してあるため、車庫のエリアに出入りする車両を検知し、車の出入りを記録したり、誰かが来たことを知ることができます。 

  • 「検出エリア」を設置し、エリア内の動きを把握 

指定したエリア内の状況を把握することも可能です。 

例として、裏庭に不審者が侵入する時、彼らは特定のルートからの侵入だけでなく、裏庭の様々な場所からの侵入が考えられます。このようなケースにおいては、前述の「検出ライン」を設定するより、「検出エリア」を設定することで、特定のエリア内の状況を把握できます。 

映像にあるように、特定のエリアで人を検知した際に、スマート照明を連動させています。また、これらの機能は検知時間を設定することも可能です。 

  • 「検出エリア」と「検出ライン」設定の組み合わせ 

「検出エリア」と「検出ライン」の特徴を組み合わせて利用することもできます。

Alarm.com社のサービスでは、カメラ1台当たりで最大3つまで「検出ライン」や「検出エリア」などのAI設定が可能です。「検出エリア」の設定では、指定したエリア内に一定期間検知対象が留まっていたら通知や録画をするという設定もできます。例えば「車が車庫の前の検出エリア内に停車し20秒以上経過した映像の記録を開始し、スマートフォンに通知をする」といった設定ができます。この機能を応用すると違法駐車などもすぐに発見することができます。 


今回は一般住宅で利用できるAIカメラのサービスをご紹介しましたが、今後はビジネスでの利用シーンもご紹介していく予定です 。

今回例に挙げたAlarm.com社は世界60カ国にスマートホームセキュリティのプラットフォームを展開している米国発のグローバル企業です。Alarm.com社は自ら直接利用者にサービスを提供する企業ではなく、世界中で12,000社を超える販売パートナーを通じてサービスを提供しています。現在、日本でもAlarm.com社のサービスが展開され、B2CのみならずB2Bの領域にもサービスの幅を広げています。 Alarm.com社のプラットフォームを活用したサービス事業は、初期投資を最小限に抑えられるため事業開始リスクを最小限にできることに加え、次々に新しい機能やデバイスが提供されるため、常にお客様に新しい価値を提供できます。

現在、弊社はAlarm.com社の日本における窓口になっております。Alarm.com社についてやスマートホームを活用したサービスに興味のある企業様はお気軽に弊社までお問い合わせください。 


日本での事例紹介

イーデバ

青森県弘前市を拠点とする企業でAlarm.com社のプラットフォームを活用し、近隣エリアで住宅のみならず、大小企業にスマートセキュリティサービスを提供しています。 

X-HEMISTRY

弊社のオフィスでもAlarm.com社の代表的な製品に触れることができます。実際に、オフィス内にはAIカメラを設置しており、社員の出入りや出勤状況をリアルタイムで把握できるので、非常に便利です。