【スマートホーム市場分析 1.3】スマートロック編

スマートホーム市場分析1.3 スマートロック編

今回は、前回のスマートホームセキュリティの話に続いて「スマートロック」と関連するユースケースについて紹介していきます。 

スマートロックはスマートデバイスの中でも、ずば抜けて高いユーザーエクスペリエンスが得られるもので、一度使うとスマートロックなしの生活には戻れなくなるくらい革新的な製品です。日々の生活における利便性向上のみならず、ビジネスにおいても業務効率向上に寄与してくれるので、今回はその概要に触れていきます。 

スマートロックとは 

スマートロックは、電話が固定電話からガラケーを経てスマートフォンに進化してきたように、住宅や商業施設など至る所に設置されている鍵がIoT技術を活用して進化した姿です。 一般的には、第一回『スマートホームセキュリティ』のコラムで取り上げたZigbee、Z-Waveなどの無線通信を活用してスマート化されています(日本ではBluetoothを採用した製品が多数ありますが、無線電波の到達距離が短いため設置や利用に際して課題が散見されます)。新築のみならず、既築でも設置できるように設計されているものが多く、手軽に設置できるものからしっかりとした工事を前提としたものまで様々な製品が出てきています。 

IoTでスマート化された商品のため当然スマートフォンでの施解錠も可能ですが、他の施解錠オプションを提供した製品もあります。 

スマートロックの主な機能 

スマートロックには、主に以下のような機能が備わっています。

オートロック

指紋認証での施解錠

ハンズフリー解錠

カードやスマホでタッチ解錠

パスコード入力による解錠

時限キーのシェア機能

※以上の機能、製品によって提供有無に差異があります。 

スマホアプリでの施解錠(遠隔での操作を含む

※特に日本市場では施錠機能のみの製品もあります。


スマートロックの種別 

ペタ付け型 

日本ではQrio社、Sesame社、Switchbot社に代表されるように気軽にオンラインで購入し両面テープで貼り付けられるタイプのスマートロックが一般消費者の中で地位を確立しつつあります。

アメリカやヨーロッパでは、錠前に一定の規格があるため比較的スマートロックの設計や設置がしやすいのですが、日本には錠前の規格が存在しないためスマートロックの製品開発や設置施工には苦労が伴うことがあります。さらに様々な錠前に加え、ドアにバーがついたプッシュプルタイプと呼ばれる錠前の関連パーツにもバリエーションがあるため、製品開発や設置施工にも苦労が伴います。 

そんな中、先に挙げたようなスマートロックメーカーは日本の鍵事情に対して様々な錠前やドアの付属品に対応したパーツを提供しており、一般消費者がDIYで設置するときのハードルを下げる努力をしてくれています。Sesame社に至っては、設置できない場合に写真など必要な情報を送付すると3Dプリンターでカスタムパーツを製作して発送してくるなど、きめ細かいサービスを提供してくれるため多くの消費者から支持を集めています。 

一方、 ドアの表面素材によって両面テープが付きにくい場合や、天候などによる影響で両面テープが剥がれてしまうこともあります。何かの拍子にスマートロックに身体がぶつかって、曲がってしまったり剥がれ落ちてしまうこともあります(X-HEMISTRYのオフィスではそういった一般消費者向けのDIY製品を普段の業務で活用しているので、そういった場面も実体験しています)。 

そういった理由から便利であると同時に消費者はある程度リスクを認識して利用する必要があるため、一般消費者にはその手軽さが好まれますが、スマートホームをサービスとして提供する事業者からは敬遠されることも少なくありません。 

プロ施工型 

スマートホームをサービスとして提供する事業者や一定の知識を持った消費者向けには「プロ施工型」のスマートロックがあります。プロ施工型は単価が高く施工費がかかりますが、より安心して使えるような設計になっています。

万が一のトラブルに対するサポート体制も大変充実してきたので、サービス提供事業者も安心してスマートロックを提供できるようになっています。 

スマートロックは電池駆動で動作するものが多く、ペタ付け型をはじめとした多くのスマートロック製品は、電池の交換タイミングが近づくとスマートフォンなどを通じて交換時期を知らせてくれます。プロ施工型は、電池の交換を忘れてしまい電池がなくなってしまった場合であっても外部から緊急給電ができる仕組みを提供し、閉め出されないような工夫がされているものが多いです。 

例えば、日本の錠前メーカートップの美和ロックもプロ施工を前提としたスマートロックを製造販売していますが、湿度の高さや紫外線、台風などの荒天でもスマートロックが不具合や誤作動を起しにくい工夫が随所に施されており、高い品質チェックも行った上で提供されています。 

サービスとしてスマートロックを提供する場合、経年劣化を想定し、起こり得るであろうトラブルに対処しておく必要があります。従って、安易に初期費用や製品単価の値段で製品選定をするのではなく、サポートや現地対応などにかかるオペレーションコストまで考えてプロ施工型を選んでいた方がトータルで安価になることが往々にしてあります。 

スマートロックはスマートホームにとってキラーコンテンツといっても過言ではないものの、サービスとして提供するためには様々な知識とノウハウが必要になります。便利で手放せない反面、当然利用中の不具合や不都合もありますし、時には緊急対応が必要なケースも出てきます。 

スマートロックを事業で活用する場合には、そういったノウハウが不可欠です。X-HEMISTRYは上記以外にも様々なノウハウを蓄積しています。 

ここからはスマートロックに関連するユースケースの一部をご紹介していきます。 


スマートロックのユースケース 

スマートロックは、日常生活向けから事業者向けまで、様々なユースケースが存在しています。私たちの日常生活をより便利にするだけでなく、ビジネスにおいても事業の効率化を図ることができます。 

一般住宅における利用シーン 

鍵を持ち歩かなくてもよい 

買い物帰りや旅行帰りなど、荷物が多くて手が空いていないから一回荷物を下ろさないといけない、というちょっとした煩わしさは誰しもが経験したことがあるのではないでしょうか。ハンズフリー解錠やタッチ解錠に対応したスマートロックを導入すると、鍵を鞄から取り出さずにスマホやスマートウォッチで解錠することができます。

鍵の閉め忘れの不安解消

家を出てしばらくしてから「あれ?鍵を閉め忘れたかも」と不安になることはありませんか。スマートロックにはオートロック機能がついたものがあるので、解錠してドアが閉まってから一定時間経つと自動で鍵を施錠してくれます。さらに、スマートフォンのアプリ内で鍵の状態をどこでも確認することができるため、万が一開いていても遠隔で施錠することができます。

家族の帰宅状況を把握

共働き世帯も増えている日本では、子どもの帰宅時に保護者が家にいることが難しいケースもあります。そういった時でも、スマートロックがあれば電話をもらって遠隔解錠もできますし、暗証番号や指紋認証などに対応したスマートロックであれば、お子さんに鍵を持たせなくても解錠が可能になります。さらにスマートロックが解錠されればスマホに通知が届くため、帰宅したことを把握できます。スマート化のメリットとしては、ネットワークカメラなどと組み合わせることで、誰が解錠したかも映像で知ることもできます。 

知人にデジタルキーを共有 

賃貸に住まれている方も仲介会社から合鍵を複数渡され、ご両親や親しい友人、パートナーに合鍵を渡したことはありませんか。合鍵は便利ではあるものの紛失リスクが合鍵の数だけ増加します。そんな時でもスマートロックがあれば、デジタルな鍵をスマホを使って共有できます。ほとんど場合、デジタルで共有できる鍵は有効期限を設定できるように作られています。また、荷物などを受け取る際にも、荷物を配達してくれる人が信頼のおける人であれば、デジタルな共有キーを渡しておくだけで、不在の際でも玄関内に荷物を置いてもらうことも可能になります。 

不動産事業者における利用シーン 

スマートロックは賃貸不動産管理会社やオーナーにもメリットをもたらしてくれます。 

内見の際の鍵の受け渡しの効率化

賃貸物件で入居者の入れ替わりがある際、安全と安心のために鍵の交換を行うことが多くあり、入退去の都度鍵の交換費用が発生します。スマートロック化して物件を貸し出し、入居者に物理的な鍵を渡さない運用であれば、スペアキーなどのリスクもなくなるためそういった鍵の交換にかかる手間と費用が不要になります。 

運用面でみたときには、物件の空室時には入居検討者に内見をしてもらうために仲介業者との鍵の受け渡し業務が発生します。こういった物理的な鍵の受け渡しを避けることで、内見希望から実際の訪問までの手間を短縮できます。スマートロックを導入することで、機会損失を事前に防げます。 

物件価値の向上による家賃の値上げ

スマートロックをはじめとして物件にスマートデバイスが備わっていることで、設備が充実していると見なされることから、スマート化されていない物件との比較で賃料を高くとれるケースがアメリカでは一般化しています。日本でも徐々にスマート化した物件の賃料が上がった事例が増えています。 

スマートデバイスに限らず、オートロックや食洗機、床暖房など設備が充実している物件はその分賃料が上がりますが、スマートデバイスはそういったものと同じ立ち位置で見ることができます。 入居者にとっても前述した住民目線でのユースケースを提供できるため、スマートロックやスマートデバイスを利用したことがあるユーザーにとって、スマート化された物件は明らかに魅力的な物件にうつります。 

スマートロックの導入は入居者に対して、より魅力的な賃貸物件を提供できるようになります。

上述した事例以外にもスマートロック一つとっても様々なユースケースやビジネスでの活用事例があります。 

今後スマートロックをより進化させる可能性が高い様々な最新技術もどんどん誕生しています。 


スマートホームのプロ集団X-HEMISTRYでは、今回ご紹介したスマートロックをはじめとしたスマートホームの関連技術やビジネスにおける活用事例を幅広くノウハウとして保有しています。 

スマートホーム先進国アメリカにおける事例の数々や調査データも多数保有しており、スマートホームの活用を検討・推進している企業様をご支援するサービスの提供が可能ですので、お気軽にお問い合わせください。